循環経済新聞・バックナンバー“2015年1月度”


1月1日号ダイジェストニュース

◇世界先導と地域密着
首都圏突出、地方創生急務/経済激変、排出企業も変化
街を歩けば中国語はもちろん、聞いたことがない言語が飛び交う。その光景は、大都市圏のみならず地方都市でも当たり前になった。廃棄物処理業者やリサイクル業者も、日常業務として成長アジアなど世界を飛び回る。

◇新春インタビュー
大震災の教訓を生かす
指定廃棄物処理に道筋を/大規模災害想定し、体制整備

- 環境省 廃棄物・リサイクル対策部長 鎌形 浩史氏に聞く -
東日本大震災からもうすぐ4年を迎える。福島県の一部を除き、昨年度末までに膨大な災害廃棄物の処理を完了したが、放射性物質に汚染された廃棄物の処理など課題はまだ山積している。想定される大規模災害へ、この教訓と経験をどう生かすのか。大震災後の廃棄物処理行政はどこへ向かうのか。環境省の鎌形浩史廃棄物・リサイクル対策部長に話を聞いた。

◇新春インタビュー
産廃業の〝製造業〟化を
優良認定、グリーン契約増加/不投など減少も監視を強化

- 環境省 産業廃棄物課長 角倉 一郎氏に聞く -
産業廃棄物処理業界がリサイクルの鍵を握る産業となった一方で、製造業などの一般企業では再生資源の利用が急速に広がっている。世界を先導する資源循環の新たな〝ジャパン・モデル〟確立へ。不法投棄や不適正処理への対策と、産廃処理業の振興を両輪とする施策をどう展開するのか。環境省の角倉一郎産業廃棄物課長に考えを聞いた。

◇新春インタビュー
法改正に向けた準備を進める
業界発展のため/業法・振興法の検討へ

- (公社)全国産業廃棄物連合会 会長 石井 邦夫氏に聞く -
(公社)全国産業廃棄物連合会は、次期の廃棄物処理法の改正や、巨大地震発生時の災害廃棄物処理に関する制度づくり、産業廃棄物処理業の健全な育成のための業法・振興法の制定を含めた検討に向け、各委員会・部会での協議を進めている。今後の連合会の方向性について連合会会長の石井邦夫氏に聞いた。

◇未来の産廃経営者が集う
個人・企業間のネットワークが拡大/産廃経営塾に迫る
(公財)産業廃棄物処理事業振興財団が運営する「産業廃棄物処理業経営塾」は昨年11期を迎え、卒塾生は400人以上に上る。参加者は各企業から選抜された経営者候補となり、廃棄物処理業に限らず、メーカーや金融業など多岐にわたる。年間約40人が半年を掛けて廃棄物処理の現状・課題・法制度について座学・ワークショップ・施設見学を通じて学ぶ。卒塾生は任意でOB会に加入することができ、そのネットワークを通じた活動に参加できることも魅力の1つだ。

◇バイオ発電増で比例ばいじん・灰
3年間で200億円市場の未来/管理型処分は不足で困難に/安全性と経済性の両方求める/環境基準以下の無害化目指す
- 焼却灰・ばいじん・鉱さい処理の最前線 -
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がスタートして、木質バイオマス発電も今年度末までに全国17カ所が発電を開始する。必要になる木質チップは、100万トン以上と推測される。各電力会社も中期的な発電事業は、基本となるベース電源を火力発電にシフトすることを明確にした。

◇地球温暖化対策にも有用な技術革新進む
廃棄物を原料にした新たなエネルギー開発
産業活動と環境保全を両立させるには、それを持続させるための環境対策技術が必須となる。その1つの例が、循環型資源を原料とした新たなエネルギー開発である。廃棄物の減量化と地球温暖化対策の両側面を持つのが特徴だ。ここでは、北陸と京都市で加速する廃棄物由来の「水素」と「軽油」の生産技術に着目し、取り組みの経緯を紹介したい。

◇温暖化はさらに進行
2℃上昇を防ぐのは困難か/IPCC第5次評価報告書の統合報告書が警告
- (一財)リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 特任首席研究員 近藤洋輝氏に聞く -
地球温暖化問題はあらゆる国に大なり小なり、影響を及ぼし始め、日本もまた影響を受け始めている。このままいくと経済にも大きな影響がでることから、各業界では自主行動計画を作るなど、温暖化対策に取り組み始めている。廃棄物業界もまた全国産業廃棄物協会をはじめ、各県の協会でも温暖化対策に取り組んでいる。

◇新春インタビュー
新年度に向け廃棄物管理を総点検!
リスクを防ぐ実務体制構築を

- 行政書士 エース環境法務事務所 代表 尾上 雅典氏に聞く -
排出事業者責任の強化とともに、廃棄物の適正な管理はますます難しく、リスクの高いものになっている。近年では、各地で厳格な行政処分事例が散見されるようになり、従来の慣習を踏襲した廃棄物管理では、思いがけないリスクが発生する可能性もある。新年度に向け、リスクを防ぐ管理体制をどのように構築すればよいか。廃棄物管理の実務チェックポイントと将来的リスクへの対処法について、行政書士・エース環境法務事務所代表の尾上雅典氏に話を聞いた。


1月5日号ダイジェストニュース

◇有効利用率82%、過去最高
エネ回収の増加が寄与/2013年実績、プラ循環協調べ
特集 廃プラスチック

(一社)プラスチック循環利用協会によると、2013年の日本の廃プラスチック有効利用率は過去最高の82%になった。サーマルリサイクル(エネルギー回収)が前年比で5.4%増えたことなどが寄与した。排出量は国の景気対策の効果もあり、940万トンと前年比微増となったが、中長期的には減少するとの見方は強い。廃棄物処理業・リサイクル業は技術やサービスの高度化が必要だ。

◇リサイクル困難物で動き
産廃業とリサイクル業の連携/再生、エネ回収とコスト削減
特集 廃プラスチック/再生利用・エネルギー回収 〈東日本〉

東日本大震災からもうすぐ4年を迎える。福島県での処理や指定廃棄物処理などが重くのしかかる一方で、廃プラスチックや有価のプラスチックスクラップの再生利用(マテリアルリサイクル)や代替燃料製造は、扱うものは違えども、「リサイクル困難物にどう対処するか」という共通の課題を抱える。焼却はエネルギー回収への要望と最終処分や維持管理の費用上昇への対応が急務だ。

◇廃プラ扱う西日本資源ヤード6割
全国の原料と燃料回収の調査/フラフとRPF・輸出にも
特集 廃プラスチック/再生利用・エネルギー回収 〈西日本〉

産廃市場の5・2兆円の中で、廃プラ関連が占める割合が6%程度の3300億円といわれる。西日本は、49%と半分近い。廃プラの原料・燃料利用ともに新規事業が圧倒的。輸出・原料化・フラフ・RPFなど燃料化に代表されるように、この10年間で、最も新ビジネスとして立ち上がった数が多い。背景には、原料となる原油が高くなり、廃プラの価値も比例して上がっていたことがある。ところが、昨年の後半に原油が下がり、樹脂の基礎原料も軒並み下がった。西日本を中心に、大波にさらされる廃プラの最新動向を探ってみた。

◇ポリスチレン高値の結末は急落
シェールオイルと生産競争/A級品も大幅値下げ乱れる市場
特集 廃プラスチック/輸出の現状と展望

OPEC(石油輸出国機構)が、2015年の原油需要の見通しを引き下げた。しかし、減産は見送った。従って、供給過剰になることは自明の理。原油価格の下落を呼び込んだ。ニューヨーク市場の原油先物は、12月10日、1バレル60.43ドルを付け、60ドル割れ寸前まで下がった。昨年の後半で、石油化学製品の国際価格は、すべて下落。建材や日用品などに使用するスチレンモノマーも価格が急落したことで、高値で買った流通業者の損失が大きくなっている。日本国内の廃プラの輸出の現状と展望を探ってみた。

◇東アジアで再資源化進む
欧米では独自の取り組み/小売再編、 リサイクルも変化
特集 廃プラスチック/発泡スチロールの国内外動向

欧米での規制強化、アジア・太平洋地域での生産・消費構造の変化、日本国内での排出元の変化、中国などでの再生ポリスチレン原料需給と高品質の溶融固化物(インゴット)の需給急変など、発泡スチロール(以下、EPS)のリサイクルに関連する情勢が大きく変わっている。

◇処理と有価で3500億円昨年同様
埋立+焼却が670億円変わらず/輸出価格下がり原料利用規模しぼむ
特集 廃プラスチック/再生品市場予測

日本国内の廃プラ総排出量は、毎年900万‐1000万トンで推移してきた。廃プラのビジネスは、大きく分けると「処理」「有価」の2つある。処理費を得る場合と有価物として売るケースの2つのパターンがある。廃プラは、あらゆる産業から排出される。製造や加工ロスもある。建設や解体現場からも発生する。物流にも緩衝材や梱包材として、なくてはならない。種類は複雑で、多数の樹脂が混ざることも多い。今年の市場予測をしてみた。

◇自治体の立入検査等増える
使用済み家電等の適正処理確保へ
違法不用品回収対策まとめ

近年、使用済み家電等を無許可で運搬する、いわゆる不用品回収業者対策の取り組みが進んでいる。自治体においても2009年、岐阜市が全国で初めて不用品回収業者の逮捕事例を出す等、積極的な対応を取る動きが増えてきた。環境省も通知において使用済み家電製品の廃棄物該当性について判断基準を定め、自治体による不用品回収業者対策を後押しする他、実態調査や廃棄物の不正輸出の水際対策に乗り出している。違法業者により回収される不用品には一般廃棄物が多く含まれることもあり、清掃事業協同組合による啓発の取り組み等もある。ここでは、違法な不用品回収業者への対策について、環境省がまとめた調査資料等を基に、現状と課題等をまとめた。

◇国内需要の動静顕著に
為替の影響は少なく/東南アジア向け活況
鉄スクラップ輸出動向

2014年1‐10月の鉄スクラップ輸出は、国内需給の影響を強く反映した。建設関係を中心に旺盛な国内需要があった第1四半期は、輸出に回るスクラップが少なかった。しかし、4月から夏季にかけては国内の供給一服、急激に増えた東南アジアからの引き合いもあって、輸出量は大幅に増加。その後は夏枯れ、韓国の経済減速等を受けて振るわず、世界的なスクラップの低調に倣う形となった。価格的にも軟調で、円安環境の影響はほとんど出ていない。

◇資源の安全神話に陰り
米経済復調でマネー流出/国内は円安環境に同調
非鉄金属国際動向

2014年の非鉄金属国際市況は、全般として低調に推移した。米国経済の復調を基調に動いた金融マーケットの影響を顕著に受けつつ、安全な資金運用先として機能。特に亜鉛は、製品である自動車産業での大きな需要が見込まれることから、ファンドマネーが多く流入して高値圏へと押し上げられた。国内建値は国際市況と同調しつつ、円安修正で高値に振れた形となった。

◇6年連続400万t台の見込み
需要減で他国分散化進む/中国の古紙輸入量は緩やかに減少
古紙の輸出動向

古紙の輸出は国内需給にも多大な影響を与えてきた。日本の場合、古紙の需給キャップ(回収量から消費量を差し引いた量)分がそっくり輸出に回っている。約8割が国内で製紙原料として消費され、余剰分の約2割が海外に回る計算だ。過去最高の輸出実績は、2012年の約493万トン。14年も6年連続となる400万トン台を突破する見込みとなった。価格面では円安の影響を受け、輸出高・国内安に。また、これまで中国に一極集中してきた輸出先は、同国の需要減によりアジア諸国への分散化が進むなど、今後の動向が注目されている。

◇少量古紙や機密の取り組み進む
小規模事業所の掘り起こしに期待
オフィス古紙のリサイクル

オフィスから排出される古紙は、事業系一般廃棄物の約4割を占める。その中でも機密古紙やOA用紙、コピー紙、シュレッダー紙等など上質系の古紙は、幅広い分野での資源化が可能だが、いまだ回収が進んでおらず、さらなる掘り起こしが期待されている。ここでは、先進的な回収に取り組む自治体の事例とともに、機密文書のセキュリティ保護とリサイクルの両立を目指す業界団体の動向を紹介する。

◇機密文書処理市場、次なるステージへ
初のガイドライン策定/業界団体が普及図る
機密文書処理の動向

古紙再生促進センター(東京・中央、岩瀬広徳代表理事)は昨年2月、これまで明確な基準がなかった機密文書処理の在り方を示すガイドラインを策定、市場の健全化に向けて動き出した。業界団体の活動も活性化しており、市場成長が加速している。

◇東南アジアを中心に需要拡大
年間21万t以上が海外へ
中古衣料の輸出動向

主に先進国から途上国に輸出される中古衣料、いわゆる「古着」の量は、今世紀に入って飛躍的に伸びてきた。日本でも反毛やウエス向けの需要が衰退する一方、品質の高さから海外での人気が高く、ここ約10年は輸出が右肩上がりの傾向に。取り扱い業者も多様化し、既存の故繊維業者だけでなく、古紙や廃プラスチックを回収する資源物のヤード業者、地域とのつながりが深い一般廃棄物業者の他、異業種からの新規参入も相次いでいる。ますます活発化する中古衣料の輸出動向を貿易統計などから探りたい。

◇店頭やイベントでの回収が定着
多様な業種で取り組み広がる
中古衣料の回収・リサイクル事例

中古衣料の回収方法が多様化してきた。ここ数年で定着し、規模を拡大しているのが、衣料品の小売販売店による店頭回収だ。アパレル以外の業種でも、社会貢献活動の一環としてイベントを実施する例が増えてきた。ごみ減量を目指し、回収から再利用までのシステム構築を図る自治体も散見される。古着需要の高まりを受け、被災地・途上国支援を中心としたリユースが多い中、マテリアル・サーマル向けの新用途開発も着実に進んでいる。

◇増税対応で改定増加
プラ等受入が多様化
自治体の処理手数料改定と古紙・プラ搬入対応

ごみ減量施策の推進等に伴い、自治体の事業系ごみ対策が年々、強化されている。消費税が8%となったこともあり、昨年は清掃工場での処理手数料改定が各地で増加した。また、リサイクルを推進するために焼却施設へのオフィス古紙の搬入を禁止する、産廃に該当する廃プラスチックの受け入れを廃止するという事例もある。ただ、飲食容器や文具等も搬入禁止とする措置には「汚れている、またごく少量排出されるプラスチックはリサイクルもしにくいし、産廃として処理するのも実状にそぐわないのでは」と疑問の声もあり、地域の状況に応じた多様な対応が取られている。ここでは、処理手数料改定の動きと清掃工場の搬入対応についてまとめた。


1月12日号ダイジェストニュース

◇大型の混合物選別ライン
総合リサイクル施設完成
7カ所目のヤード開設

- 都市クリエイト -

都市クリエイト(大阪府高槻市、前田晋二社長)は、産廃の中間処理総合リサイクル高槻ヤードを完成した。12月5日に施設見学会と竣工式を関係者約500

人を集めて開催した。新ヤードは、大型の混合廃棄物選別ラインや縦型破砕機などを設置。敷地面積約4500平方メートル、工場等棟建屋2500平方メートルの大きさ。高精度選別と分解で、90%のリサイクル率を実現した。


◇天津にリサイクル工場
ロサンゼルスにも新ヤード
プラスチックの国際循環強化

- 建行 -
プラスチックリサイクル材料の加工・販売などを手掛ける建行(本社・東京、陳英建社長)は、2014年末までに中国華北地方の集荷・加工拠点として「天津工場」を建設した。現在、米国・ロサンゼルスにも新たに集荷のための工場建設を進めており、既存の日本、タイの集荷工場などと合わせて、国際的なリサイクル網を強化する。

◇官民連携で戦略的な都市鉱山
コンソーシアムが始動
早期の社会導入を目指す

戦略的な都市鉱山開発の実現に向けた官民連携組織「戦略的都市鉱山研究拠点(SURE)コンソーシアム」(大木達也会長)の活動がスタートした。(独)産業技術総合研究所の研究組織であるSUREと企業、業界団体、政府機関などが連携し、戦略的都市鉱山の社会導入を早期に目指す。

◇基礎実験の結果は良好
模擬工程で規制値クリア
事業再開へ第1段階/食リ施設(東京・八王子)の臭気問題

食品リサイクル堆肥施設「八王子バイオマス・エコセンター」の事業再開を目指すイズミ環境(東京都八王子市、松山政治社長)は、2014年12月8‐21日の2週間、東京都西多摩郡内で、臭気改善策の有効性を確認するための基礎実験を、住民公開のもとで行った。実機の堆肥製造工程と脱臭工程を模擬した実験で、「臭気濃度の法定値をクリアできることを確認できた」(同社)としており、同社では市に報告し、住民説明会を経て、実機を使った実証へと歩を進めたい意向だ。

◇新会社設立と業務提携
ヴェオリア・ウォーター・ジャパンと
- タケエイ -
建廃大手のタケエイは12月25日、世界的環境企業ヴェオリア・エンバイロメント(本社・フランス)の日本法人ヴェオリア・ウォーター・ジャパン(東京・港、クリスチャン・ジェルサレ社長)と資本業務提携を行い、共同出資による新会社T・Vエナジーホールディングス、V・Tエナジーマネジメントを設立(出資比率はともにタケエイ7:ヴェオリア・ウォーター・ジャパン3)したことを明らかにした。今後、タケエイの既存事業をベースにヴェオリアグループの経営資源を有機的に結合させ、国内および海外での事業展開を協働していく。

◇技術など検討状況を報告
今後の方向性を確認
- 巨大地震災害廃検討会 -
環境省は12月10日、東京都内で「2014年度巨大地震発生時における災害廃棄物対策検討委員会(第三回)」を行った。技術・システム検討ワーキンググループにおける検討状況が報告された他、これまでに委員から挙がった意見についての論点整理が行われ、今後の方向性が説明された。

◇ICカードで運搬終了報告
JWNETの入力作業簡素化
- (公財)日本産業廃棄物処理振興センター -
(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(岡澤和好理事長)は、JWNETに、ICカードを利用した運搬終了報告機能のベータ版を加えて運用を開始した。排出事業場で廃棄物の情報を登録したICカードを処分事業場で読み込むことで運搬終了報告ができる。情報の入力・読み込みにはスマートフォン(Android端末)を使う。

◇小規模熱電併給の発電所に注目
木質バイオマスエネルギー
揺らぐFITと今後の木質バイオマス発電

- 利用推進協議会 会長 熊崎 実氏 -
木質バイオマス発電所が全国各地で計画されている中で、昨年10月の九州電力に端を発した太陽光発電の接続申込の回答留保。各電力会社に広がり、再エネ普及に暗雲が立ち込めた。固定価格買取制度(FIT)の大幅な見直し、さらに廃止といった声も聞かれるようになった。また、昨年末の衆議院議員選挙で自民党が圧勝し、原発の再稼働も眼前に迫っている。今後、FITはどうなるのであろうか。木質バイオマス発電はどう進めていけばいいのだろうか。木質バイオマスエネルギー利用推進協議会の熊崎実会長に語ってもらった。

◇投入チップの傾向と推移
41事業所の稼働状況
全国木質バイオマスボイラーアンケート

2014年12月初頭、全国で木質バイオマスボイラー、もしくは同燃料を活用した火力発電所を運営する企業を対象にアンケートを実施した。104事業所へ解答を依頼したところ、41事業所からの有効解答があった。今回で3年目の調査となっており、例年通り設置時期や稼働率、チップ種別・各割合、ボイラーの様式(熱利用もしくは発電)、発電出力、FIT導入有無を聞いた。

◇全国各地で進む発電事業計画
PKSなど投入チップ多様化へ
木質バイオマス発電事例特集

2014年も木質バイオマス発電事業をめぐる動きは大きく、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)に基づく同事業の新規参入が相次いだ。FIT施行から2年以上が経過し、早期に計画を打ち出した事業者が14年までに稼働を開始。現状、FIT向けの新設の発電所(出力5000キロワット級)は10件を下回っているが、今年は20件以上の施設が完成し、稼働する見通し。ここでは、14年内に発表のあった事業者の計画をピックアップして紹介する。近年、立ち上がっている計画の傾向として、FIT施行当時の計画と比べ、▽発電規模が数万キロワットと大きい▽山中ではなく港近くに建設▽PKS(パームやし殻)利用を表明――などが見受けられる。

◇全国で木質バイオマス発電所が順次稼働
年間必要チップ量は1000万t超へ
2012年7月、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)施行以来、同制度を追い風に太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスを利用した発電計画が続々と立ち上がっている。特に木質バイオマス燃料を利用する発電計画は絶えることなく立案されており、今後もこの傾向は収まる気配を見せていない。ここでは、全国各地で計画される木質バイオマス発電事業をマップ化・一覧化し、どの地域でどれほどの規模の発電計画が進んでいるのかを紹介する。

◇ドイツ・オーストリアの木質バイオマス利用
2014ドイツ・オーストリア視察
世界的にも有数のバイオマス先進国として知られているドイツだが、森林面積は日本の半分程度に過ぎない上に、建設系廃材の発生も少ない。しかしバイオマス利用の先進国としての体制をこれまでに作り上げており、国際的にも高く評価されている。またオーストリアは、ヨーロッパでも高い森林利用率を誇り、アルプス山脈に隣接した山岳地形は、日本とも共通点があると言われ、今後のバイオマス利用のヒントになるという識者もいる。日報ビジネスとティ・シイ・アイジャパンは、筑波大学名誉教授、木質バイオマスエネルギー推進協議会会長の熊崎実氏を団長に迎え、昨年10月5日から12日まで、両国の木質バイオマス利活用の調査を実施した。

◇国内の山材利用と海外企業の算出
未利用材の積極利用に向けて/日本での小規模バイオマス発電
山材利用による地域活性も/国内で希少なガス化発電施設

- やまがたグリーンパワー -
ドイツやオーストリアでは小規模でのバイオマス利用が主流になってきている一方で、日本では5000―1万キロワット前後の中‐大規模のバイオマス発電が主流となっている。小規模の発電については採算性が低いとの見方もあり、日本で稼働している施設は少ない。しかし国内でも比較的小規模で、未利用材を積極的に使用することで地域貢献しながらバイオマス利用を進めている事業者もいる。やまがたグリーンパワー(山形県村山市、鈴木誠社長)は、山形県村山市で小規模施設によるバイオマス利用をすでに7年以上行っている。

◇飼肥料優先、エネ化で補足
重要性高まる市町村の役割/制度見直しで方向性明らかに
ここがポイント! 今後の食品リサイクル

食品リサイクル制度見直しに関する食料・農業・農村政策審議会食品リサイクル小委員会と中央環境審議会食品リサイクル専門委員会の合同会合は、計11回の議論を経て、昨年6月に報告書を取りまとめた。取りまとめの内容は、10月に両委員会のそれぞれの親部会に報告されており、残すは基本方針や食品関連事業者の判断基準省令など詳細規定の議論のみとなっている。報告書が提示する今後の食リの推進方向について、制度の課題である食品流通の川下における食リに焦点を当てながら、ポイントを整理した。

◇メタンガス化、飼料化が進展
農家と接する機会を増やす努力/BDF利用拡大の挑戦も
食品リサイクル事業者特集/東日本編

東日本の食品リサイクル事業では、飼料化、メタンガス化が進展しているといえる。排出事業者との連携によるコーヒー豆かす飼料化の取り組みや家庭系生ごみを受け入れ、メタンガス化する取り組みが注目される。堆肥化は地域密着、農家と連携した着実な取り組みがある。一方、単体の事業では採算が厳しいとされるBDF。地域の需要家と連携・協力し、回収利用拡大に挑戦する事業者もある。

◇食リ普及に向けて方策次々
官民連携やブランディング戦略/一般消費者へのPRも
食品リサイクル事業者特集/西日本編

近年、新たな展開を見せる食品廃棄物のリサイクル。確実な適正処理はもちろんのこと、自治体等との連携やバイオマス燃料の免税措置、生産者を巻き込んだ成果物のブランディング、CSR活動を通した消費者へのPRなど、食品リサイクル普及に向けたさまざまな方策を打ち出す事業者が増加しつつある。ここでは、堆肥化や飼料化、燃料化の別を問わず、食品リサイクルそのものが社会的により認知されるべく取り組む再資源化事業者の事例を紹介する。

◇地域づくりの視点重視
売電に偏らない構想を/選定地域のフォローも注力へ
バイオマス産業都市の進捗

- 農林水産省 バイオマス循環資源課長 谷村 栄二氏 -
農林水産省など関係7府省が、それぞれの施策を持ち寄りながら推進するバイオマス産業都市構想で、2014年度は昨年11月に6地域が選定され、前年度分を含めると、選定された都市は計22地域となった。一方、この施策の背景にある再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)をめぐっては、送電網への系統連系などの問題が浮上している。FITの現状を踏まえた今後のバイオマス施策について、農林水産省バイオマス循環資源課長の谷村栄二氏に話を聞いた。

◇ループ構築を排出側がリード
情報提供や業者間マッチングで/直営農場等の設立も
食品R排出事業者の取り組み

食品リサイクル普及に向けて、近年存在感を増しているのが、大手小売や外食チェーンといった食品廃棄物の大量排出事業者だ。大企業ならではの広範囲かつ横断的な取り組みを展開するだけでなく、自ら率先して食品リサイクルループの構築や再資源化事業者の育成、一般消費者への啓発にまで踏み込むなど、CSRにとどまらない精力的な活動が増加しつつある。ここでは、主体的な動きを見せる排出事業者の事例を紹介する。

◇生ごみエネルギー化隆盛
先端技術との組み合わせも
海外への技術移転も視野に/バイオガス利活用特集

食品廃棄物リサイクルやバイオマス資源の活用、エネルギー需給の問題や再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)などで注目を集めたバイオガス利活用。一時の盛り上がりに比して、コストの問題や運営の難しさ等で、順調に稼働した計画は決して多くないのが現状だ。そうしたなか、自治体との協力や、複合的な処理との組み合わせ、また都市部での利用等の特徴的な利活用事例が現れつつある。

◇制度の矛盾解消?
状況改善は自治体次第/問われる登録事業者の"質"
食リビジネス 今後の市場

昨年まで11回にわたって行われた食料・農業・農村政策審議会と中央環境審議会の合同会合を経て、今後の食品リサイクル推進に向けた具体的施策の方向性が明らかになった。 食リ制度の施行以来、食品リサイクル業者は厳しい事業環境に置かれてきたが、今回の制度見直しで市場はどのように変化していくのか。新たな施策が市場に及ぼす影響と、食リビジネスを取り巻く今後の状況を占ってみた。

◇外食では宿泊施設でロス多く
野菜の食べ残しが目立つ結果に
食品ロスデータ集

食品廃棄物の発生抑制・リサイクル分野で、近年関心が高まりつつあるのが食品ロスの問題だ。政府の試算によると、食品廃棄物に含まれる可食部分「食品ロス」は年間500万‐800万トンが発生。事業系食品廃棄物の排出量715万トンのうち300万‐400万トンが、家庭系食品廃棄物の排出量1014万トンのうち200万‐400万トンが可食部分だと言われており、特に事業系は約半分が食品ロスとなっている。

◇廃棄物処理法に基づく適正管理
金属水銀は廃棄物になる可能性も/水銀輸出は原則禁止へ
水俣条約と水銀廃棄物対策

2013年10月の外交会議で採択された「水銀に関する水俣条約」。条約の発効に伴い、日本国内からの水銀輸出は原則禁止となるため、将来的には金属水銀を廃棄物として取り扱うことになる可能性もある。環境省では、廃棄物処理法に基づく適正な処理の在り方を検討し、昨年11月20日に水銀廃棄物の対策案を示した。廃金属水銀等を特別管理産業廃棄物に指定することや収集運搬、保管、中間処理および埋立処分の方法を定めることが必要であるとした。

◇無害化施設は全国22カ所に
低濃度PCB廃棄物
既存施設では処理品目を拡大/汚染土の調査・処理も提供

微量ポリ塩化ビフェニル(PCB)汚染廃電気機器等を含めた低濃度PCB廃棄物の無害化処理は、都道府県知事などによる許可と併せ、環境大臣による認定を受け、民間の産業廃棄物焼却施設を中心とした体制が敷かれている。昨年12月4日現在、全国で低濃度PCB廃棄物無害化処理施設は大臣認定施設20カ所、都道府県知事などによる許可施設2カ所が稼働している。昨年5月には、溶剤循環洗浄法を用いた移動式の洗浄施設が国内で初めて認定され、移動困難な大型機器を現地で無害化処理できるようになった。最近では、すでに認定を受けた事業者が新たな施設の整備などを行い、対象品目の拡大や処理能力を増加させた事例もある。低濃度PCB廃棄物無害化処理施設の動向をまとめた。

◇幅広い受入対応で受託拡大
金属含有廃液Rも
廃液処理・リサイクル事例紹介

廃液の処理施設が多様化・専門化している。分析設備の整備や専用受入設備の増強等で、処理困難物への対応を高めるとともに、金属含有廃液からの金属回収、リサイクルの推進等の取り組みも増えてきた。ここでは、廃液の処理・リサイクルを行う事例を紹介する。


1月19日号ダイジェストニュース

◇来年度予算9322億円
除染、廃棄物関連が拡充
前年度から約1300億円増

- 環境省 -
環境省の2015年度予算が1月14日、明らかになった。除染の実施に4153億3300万円、中間貯蔵施設の整備等に758億円、廃棄物処理施設の更新を実施するための循環型社会形成推進交付金(浄化槽分を除く)に480億9700万円をそれぞれ計上している。全体の予算は前年度比116%の9322億円に上った。

◇廃プラ燃料事業を拡充
新たにフラフ設備整備/高品質RPF、月800t出荷
- スリーティーセンター -
スリーティーセンター(本社・栃木県佐野市、吉澤浅一社長)は、従来のRPF製造に加え、新たにフラフを回収する設備を整備した。RPF製造ライン(破砕・圧縮固化)を部分的に改修し、廃プラスチックをフラフの状態で回収する。現在、塩素含有率3500ppm程度の高品質RPFを月間約800トン製造し、製紙会社や石灰会社に出荷している。同社では、「代替燃料の需要家企業の要望に応えて整備した。廃プラを利用した燃料事業のメニューが増えた」と述べている。

◇タブレット専用ソフトを評価
ユーザーデータのみ消去/ガイドラインも策定
- (一社)情報機器リユース・リサイクル協会 -
(一社)情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)は、タブレットのフラッシュメモリ(フラッシュROM)のユーザーデータのみを消去するソフトウェアに対し、認定資格を付与することとした。第1回目の評価では、リプロ電子のRe‐secure 3.0.x.(Android タブレット用)とRe‐secure 3.0.x.(iPad用)を認定した。同時にタブレット専用データ消去に関するガイドラインも策定した。

◇食残、プラを自家処理
セラミック化し炉内利用/ASK商会が民間1号
- 玉三屋食品 -
惣菜などの製造・卸を手掛ける玉三屋食品(名古屋市、松岡宗之介社長)は、同社守山工場(同市)から排出されるカット野菜くずやビニールごみのオンサイト処理に、廃棄物を分子分解させてセラミックを生成する装置を導入し、本格稼働を開始した。同装置は、ASK商会(相模原市)が「ERCM」として手掛けるもので、民間企業向けには第1号の導入事例となる。

◇ICカードで情報管理
日本初、施工現場で運用
- 大林組 -
総合的な建設事業を手掛ける大林組は、国内2カ所の現場で(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが開発したICカードでの電子マニフェスト管理・終了報告システムを導入した。実際の現場で運用するのは日本で初めての取り組みとなる。
導入の背景としてはコストの削減やBCP(事業継続計画)対策、数量管理の正確性担保などが挙げられる。

◇植生を維持して除染が可能
空間線量率を5割以上低減
- 清水建設 -
清水建設は森林植生の健全性を維持したまま除染が行える「SCクリーンシステム」を確立し、福島県広野町の2013年度除染作業業務(13年6月25日‐14年11月28日)のうち、家屋から約20メートル圏内の森林再除染作業の一部で使用した。空間線量率を5割以上低減させ、実施した面積は合計で20万平方メートルに上る。

◇主力製品をフルモデルチェンジ
年間1万台の販売目指す
- ニチユ三菱フォークリフト -
ニチユ三菱フォークリフトは、リーチ型バッテリーフォークリフト「プラッター」をフルモデルチェンジし、1月5日から販売開始した。「思いのままに」をコンセプトに、走る・曲がる・止まる・上げるの基本操作性能を向上。新たに「ECOスイッチ」を搭載するなど省エネ性についても改善を図った。国内の物流現場向けに、年間1万台の販売を目指す。

◇ワンストップ体制構築へ
特集 建設系廃棄物/インタビュー
- タケエイ 代表取締役社長 山口 仁司氏 -
建廃大手のタケエイは昨年、東北の災害廃棄物処理を終了し、その一方で業務提携やM&Aを進めながら、処理品目の拡大や再生可能エネルギー事業への進出など、新たな展開を進めている。そこには環境企業としての新たな時代に向けた成長戦略があった。(聞き手=本紙・徳永)

◇五輪・再開発で発生量増大
単価上昇に排出者の理解を/2次処理困難で次の一手
特集 建設系廃棄物/首都圏の建廃動向

東京オリンピックに向けた解体・建設工事が今年から本格化する。落札者が決まらず三度にわたる入札が行われるなど、長らく懸案となっていた国立霞ヶ丘陸上競技場 の解体工事も北工区・南工区ともに落札者が決定。大量のコンクリート塊と建設発生土の搬出が見込まれている。
さらに今年の末ごろからは新築工事が着工する計画で、主に首都圏の産廃業者が発生する廃材の受け皿になる。

◇選別ライン新設各地で続々
資源化と燃料化組み合わせ減量/可燃性は焼却と炭化処理も
特集 建設系廃棄物/混合廃棄物の動向

廃棄物処理やリサイクルを基盤にする業界に、変化の波は押し寄せてきた。円安や原油下落、国際情勢による乱気流、国内に目を向けると、震災対策や東京五輪に向けた都市計画を含めたリニューアル。防災力向上のための公共事業にかける予算枠は広がる。建物解体は増加してきた。1960年代の高度成長期に建築された建築物は、解体時を迎えており、各地で、大型の建物や鉄塔の解体ばらしも進められている。増加している建設系混合廃棄物に対応する西日本の新施設を中心に紹介する。
◇解体系由来が多量排出
削減難しい建設系廃棄物/求められる選別技術
特集 建設系廃棄物/建設混合廃棄物の最前線

建設後、50年以上が経過した建築物の更新や解体工事の増加に伴い、急激に増加している建設系廃棄物、特に建設系混合廃棄物の対応が待ったなしの状況下にある。社会資本の老朽化に伴う更新工事はじめ、維持管理といった需要が増加しているのに加えて、2020年には、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた関連工事などもはじまっているからだ。

◇再生石膏で国内初の安全品質ガイドライン
特集 建設系廃棄物/インタビュー
発行後の展開と影響/進む、農業用途への適用
廃石膏ボ、リサイクル促進へ一歩

- 石膏再生協同組合 理事長 市川 學氏 -
環境省の認可団体で、廃石膏ボードのリサイクルを進める石膏再生協同組合(東京・中央、市川學理事長)は2013年10月、「再生石膏を用いた農業用土壌改良資材の環境安全品質ガイドライン(試行版)」を策定した。なお、ガイドラインの監修は、松本聰氏((一社)日本土壌協会会長)、肴倉宏史氏((独)国立環境研究所・主任研究員)、遠藤和人氏((独)国立環境研究所・主任研究員)、佐藤研一氏(福岡大学教授)、藤川拓郎氏(福岡大学・助教)らによる。再生石膏の環境安全品質を確保するためのものとしては国内初となり、その後改訂を行い現在は新しい版となった。現在はガイドラインを元に具体的な検査方法を示したマニュアル作成を進めている。

◇リサイクルの現状と課題、将来の見通し
続く解体需要で受け皿確保が急務
求められる解体系R技術
特集 建設系廃棄物/石膏ボードリサイクル処理動向

高度経済成長期に建てられた30‐50年前の建築物が更新時期を迎え、2010年あたりから徐々に解体需要が増えてきた。一部の地域で落ち着きつつあるとされるものの、全国的に見て、まだまだ需要は高い。老朽化した建物をはじめ、高層・超高層建物といった高度な解体施工技術を要する解体現場で、今年はさらなる増加が見込まれる。解体需要が高まるに連れ、課題になるのが建設系廃棄物の処理先の確保だ。すでに解体副産物の発生量が大幅に増加しており、各社、処理先の確保が急務となっている。建設系廃棄物の各品目で再資源化率の上昇が進む中、その処理が困難な品目の1つに廃石膏ボードがある。

◇注目集まるリサイクル分野
バイオマス活用で新規事業進出も
特集 建設系廃棄物/木質チップのサーマル利用事例

現在、熱利用、もしくは発電ボイラーで用いられる木質バイオマス資源の多くは、リサイクルチップが占めている。FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)施行以降、山林から発生する未利用木材のサーマル利用が進みつつも、主流は家屋解体材等を由来とするチップだ。本紙1月12日号10‐11面に掲載した「全国木質バイオマスボイラーアンケート」で紹介したように、41事業所50社ボイラーで投入される木質チップ256万トンのうち、大半はリサイクルチップという結果が出た。

◇木質バイオマス発電計画動向
利用割合は生木6、加工2、解体2/ヤシ殻年間140万t必要に
国内外の木くず動向

全国の木質バイオマス発電計画は、着々と進んでおり、2015年春には、約十数件の木チップを燃料としたFIT対応の新規発電施設が稼働をスタートする。新たに必要になる木質チップ量は、年間100万トン。木質チップを利用する発電事業者は、燃料調達が生命線だ。発電が始まる1年ほど前から丸太を購入している。

◇現場のコンクリート塊の処理が有利に
岐路に立つがれき類の処理事情/運搬費削減など大きく貢献
移動式がれき類破砕施設

国内における建物の耐久年数は、建築物の構造による多少は異なるものの、一般的に30‐50年とされている。1950年代から70年代の高度経済成長期以降に建設された建物の多くが更新時期を迎えている。ここ数年、解体工事の受注件数は増加傾向にあり、今後20‐30年は増加することが見込まれている。
解体需要が高ければ当然、建設系廃棄物の発生量は増える。そこで問題になるのが、解体で発生した廃棄物の移動だ。

◇物性生かす施工で真価発揮
用途拡大で広がる市場/廃瓦・規格外瓦のリサイクル事例
全国で発生する廃瓦は、年間100万トンに上ると言われており、一般的に安定型最終処分場で埋立処分されていることから、再資源化率が低い品目となっている。細かく砕くことで砂利に代わる骨材として有効活用できるなど、2次製品の開発・普及が進めば、さらなる市場が期待される分野だ。

◇解体需要増で求められる適正処理
調査対象拡大で施工費用増/苦悩する解体工事業者
アスベスト処理動向

石綿を含んだ建材を使用した建物は、民間のものだけでも国内に280万棟あると推計されている。しかし、その実態はまだまだ掌握しきれていない現状だ。国が進める経済政策の影響もあり、解体・建設需要が続いている。
そうした中、2030年頃に石綿含有建材を使用した建物の解体需要がピークを迎える。昨年は、「大阪泉南アスベスト訴訟」での最高裁判決で、「責任は国にある」とした初の判断が下され大きな話題となった。30年に向けて、さらなる解体需要が続くことから、建築物における石綿対策の重要性は増し、その動向が注目される。

◇今後、さらなる建設・解体需要増
各社の試みを紹介/進む現場での発生抑制の取り組み
混合廃棄物への対策が急務/ゼネコン排出抑制の取り組み

大手ゼネコン各社では、建物の建設や解体時に発生する廃棄物への対策を年々強化し、一部の品目では9割を超えるリサイクル率を達成した。しかし、がれき類や木くずといった品目では、リサイクルが進んでいるものの、建設系混合廃棄物の処理など課題もあり、建設・解体副産物の対応が急務となっている。今回の特集では、スーパーゼネコン5社のCSR報告書や環境・社会報告書などを基に、再生利用およびゼロエミッション化など直近の進捗状況を確認するとともに、取り組みの方向性を検証する。

◇社員に寄り添い、励ます
一人を大切にすることが基本/産廃処理業の「企業は人なり」
かつては3Kと呼ばれ、不人気だった産廃処理業だが、高収入・高待遇で人材を確保してきた。近年、少子高齢化など社会構造の変化がベテランの大量退職と、慢性的な若者不足をもたらしており、産廃処理業も例外ではない。会社に必要な人材をいかに育て、長く働いてもらうか、誠実な取り組みが求められる。本紙では社員に寄り添い、励まし、一人を大切にしていく取り組み事例とともに、ユニークな人材育成モデルの構築を目指すNPO法人の取り組みを紹介する。

◇2015年春に対策行動指針策定
巨大地震への備えが急務に
環境省/災害廃棄物処理対策

昨年は爆弾低気圧による豪雪や広島での集中豪雨被害、御嶽山をはじめとする火山の噴火、台風といった自然災害が相次いだ。こうした災害が発生する傾向は今後も続くと見られ、近い将来には「南海トラフ巨大地震」などの巨大災害も予測されている。その際、被災地域の復旧・復興や生活環境保全のため必要不可欠な課題となるのが、膨大な災害廃棄物の円滑な処理だ。各県の産廃協会や関連団体でも災害時の支援協定の締結といった対策が急がれているが、ここでは指針となる環境省の施策についてまとめてみた。

◇搬入開始へ調整・準備が進む
関係法や基本計画が成立/個別交渉など課題は山積
中間貯蔵施設整備事情

福島県内で発生した除染廃棄物や1キログラム当たり10万ベクレルを超える焼却灰などを30年間保管する中間貯蔵施設は今年1月中の搬入開始を目標に2014年12月末時点において調整が進んでいる。14年には福島県の施設受け入れ表明や、輸送基本計画の策定、日本環境安全事業株式会社法の改正など稼働開始に向けた準備が大きく進んだ。一方で、地権者交渉や地域振興策の提案など多くの課題がまだ解決されていない。

◇搬入開始目標まであとわずか
候補地で反対運動が激化/詳細調査など実施が困難に
指定廃棄物最終処分場整備事情

1キログラム当たり8000ベクレル超の放射性物質を含む指定廃棄物を処分する最終処分場は宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の5県で設置が予定されている。
2014年に入り宮城県の深山嶽(栗原市)、下原(大和町)、田代岳(加美町)、栃木県の寺島入(塩谷町)がそれぞれ詳細調査候補地として提示された。加美町と塩谷町では町長も加わった形で反対運動が行われ、詳細調査の実施が困難になるなど事態は複雑化している。

◇大阪湾フェニックスが2回目の値上げ
鹿児島で公共関与が完成/拡張で不足補う安定型も
最終処分の西日本動向

全国各地で、慢性的な不足状態に陥っている「最終処分場」。再生利用量が増加し、最終処分量が減少する傾向は、2007年度まで継続していたが、08年度以降は、その傾向は弱まった。最終処分量は下げ止まったが、残余容量は別だ。都市部、特に首都圏では、最終処分の残余容量が5.3年になった。ひっ迫した状況は、さまざまな問題を引き起こしている。産業界にも波紋は広がる。最近開設した鹿児島県の公共関与の屋根を被覆した処分場と近畿のフェニックスの値上げ動向などを紹介する。

◇埋立地にメガソーラー建設広がる
FITで売電収入見込む/"一石三鳥"の跡地活用法
産廃処分場での太陽光発電事業

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の施行から2半年が経過した。全国では各地の廃棄物処分場で大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を建設する動きが広がっている。埋立終了後の跡地は、さまざまな制約により土地利用が難しく、長期間にわたって廃水処理などの環境保全を行う必要もある。太陽光発電事業は、こうした土地を有効利用できる上、売電収入を見込める、企業イメージの向上にも役立つ、まさに「一石三鳥」の活用法だ。ここでは、自治体・民間の産廃処分場で稼働を開始した事例を紹介する。

◇電子化率50%達成へ粘り強く
自治体の導入促進が追い風に/電子マニフェストの最新動向
適正処理の担保だけでなく、事務作業効率化のツールとして認知度が広がっている電子マニフェスト。(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(岡澤和好理事長)によると、ここ数年の年間登録件数は200万件単位で増え続け、2014年12月で約170万と過去最高を更新。国が設定する16年度までの電子化率50%の目標達成に向け、粘り強く取り組む。一方、不適正処理防止の有効策として電子マニフェストを重視する自治体が排出事業者や処理業者に積極的に導入を促すようになっており、追い風効果が期待されている。

◇医廃含む産廃処理で優良業者が注目
義務対象は国などの機関100カ所/環境配慮契約と産廃処理
環境配慮契約法の契約類型に産廃処理委託が追加され、優良業者に有利になるとみられたことで処理業界の注目が高まっている。同契約は、国が勧める優良産廃処理業者認定制度の中身を踏まえ、優良業者が入札しやすい仕組みとしている。義務対象となる国などの機関は大学まで含めると100カ所を超える。環境配慮契約の締結実績は2013年度に件数で11.7%にとどまったが、14年度は40.8%に増加した。本格的なスタートは14年度からで、国は環境配慮契約による影響や優良産廃処理業者の参入状況などを調査する。

◇大規模事案、新たに2件
「いまだ撲滅に至らず」/残存量約1700万t
不法投棄と支障除去

環境省は昨年12月に2013年度に新たに判明した産廃の不法投棄等事案の状況、13年度末時点の不法投棄等事案の残存量等の調査結果を公表した。新たに判明した不法投棄件数は159件で、近年の減少傾向を見せた。しかし、いまだ撲滅するには至っていないとの見方を示している。一方、不法投棄等の残存量は約1700万トンと膨大であり、支障などの状況調査が注目される。


1月26日号ダイジェストニュース

◇環境安全品質基準を厳守へ
ガイドライン大幅改正
- 鐵鋼スラグ協会 -
 鐵鋼スラグ協会(柳川欽也会長)は1月14日、昨年会員の鉄鋼メーカーで発覚した鉄鋼スラグ製品の品質管理・販売管理などの不備に対して、2005年に策定した「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」を大幅に改正した。用途ごとに適用する詳細な環境安全品質基準の設定などを盛り込んでいる。

◇マレーシアで廃プラ油化
中長期の事業として挑戦/4t/日、新工場に設置
- ヘンヒアップ・インダストリー社 -
 マレーシアのリサイクル会社大手、ヘンヒアップ・インダストリー社(本社・ジョホールバル市、Kian Hoe Seah社長)は、今年7月をめどにジョホール州内の新工場に処理能力1日当たり4トンの廃プラスチック油化設備と生成油発電設備を建設、8月からの本格稼働を目指す。廃プラスチックについては従来、マテリアルリサイクルを手掛けてきたが、処理費用の多寡ではなく、将来を見据えた中長期の事業として取り組むことを決めた。

◇排出者の多様なニーズに対応
顧客サービス充実へ/処理困難物や商品廃棄も
- 東武商事 -
 廃水・焼却処理を手掛ける東武商事(埼玉県松伏町、小林増雄社長)は、処理困難物や商品廃棄など取扱品目を拡大し、顧客サービスの充実を図る。分析部門を強化することで、排出事業者の多様なニーズに応える。
 同社は1970年に廃油回収やタンク清掃を事業として創立した。水処理専門プラント「松伏リサイクルセンター(埼玉県松伏町)」、再生重油の製造を手掛ける「吉川リサイクルセンター(埼玉県吉川市)」、コンクリート固形化施設「柳町リサイクルセンター(埼玉県松伏町)」、汚泥乾燥施設「那須環境センター(栃木県那須塩原市)」、総合リサイクル施設「那須総合リサイクルセンター(栃木県那須塩原市)」を構える。

◇新たな目標値設定へ
年度内に基本方針など議論/食品リサイクル制度
 食品リサイクル制度の見直しで、農水省と環境省は、基本方針と食品関連事業者の判断基準事項を改定するため、食料・農業・農村政策審議会食品リサイクル小委員会と中央環境審議会食品リサイクル専門委員会の合同会合を年度内に開催し、4月から再生利用等実施率などの新たな規定に基づく制度の施行を目指す意向だ。

◇木材Rで循環システムを構築
木質バイオマス発電事業にも参画
- 山室木材工業 -
 山室木材工業(滋賀県米原市、下村和幸社長)は、1969年に創業以来、木製パレットの製造販売を開始し、84年に木材廃棄物リサイクル工場を設立。2012年10月には、ヤマムログループの新事業として「いぶきグリーンエナジー」を立ち上げ、今年1月から木質バイオマス発電事業を開始した。本格稼働した「いぶきグリーンエナジーバイオマス発電所」向けに、山室木材工業は燃料チップの供給事業をより一層推進し、木質資源による再生可能エネルギーの普及に努める。

◇現地での面積確認を拒否
見形町長、環境省に伝える/指定廃棄物最終処分場
 1キログラム当たり8000ベクレル超の放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の設置をめぐる問題で、詳細調査候補地となっている栃木県塩谷町の見形和久町長は1月19日、環境省を訪れ現地での面積確認を拒否する意向を示した。
 塩谷町は以前環境省に提出した質問状の中で「処分場建設のための必要面積について川との近接や、林道からの高低差などから使用できる部分は少ない」と指摘していた。

◇福島県内減容化処理等に着手
都市環境本部の受注額は6割増
- JFEエンジニアリング 代表取締役専務執行役員 都市環境本部長 吉田佳司氏 -
 JFEエンジニアリングは2014年度、福島県内での焼却・減容化施設の受託などが寄与し、都市環境本部の受注額が昨年度に比べ6割増加した。スタンダードケッセル・バウムガルテグループ(独国、以下SBグループ)の子会社化、公共サービス事業部の設立など、15年度の事業拡大に向けた取り組みも進んでいる。(聞き手=本紙・中山)

◇費用分担、再商品化が論点
法見直し、年度内まとめか/注目される「その他プラ」
特集 容器包装リサイクル

 容器包装リサイクル法の見直し議論が難航している。2013年9月以降、昨年9月まで中環審と産構審による14回の合同会合が行われてきたが、議論の取りまとめが大幅にずれ込んでいる。論点は多岐にわたるが、ポイントはその他プラなどに係る分別収集・選別保管に係る費用分担や合理化拠出金のあり方、再商品化のあり方などだ。

◇リサイクル大再編の始まり
事業安定へ、需要家が鍵/国内高度化、輸出も変化
特集 容器包装リサイクル/PETボトル〈東日本〉

 使用済みPETボトルリサイクル事業の大再編が始まった。輸出される量は依然として多いが、中国での需要変化、国内の"ボトルtoボトル""ボトルtoトレイ"など高度なリサイクルを手掛ける業者の競り合いが市場を変えつつある。メインステージは関東だが、これが東日本全域や全国にまで広がるのか。関係者は固唾をのんで状況を見ている。

◇市町村分別収集量の3分の1が流れる
価格の乱高下で入札の短期化に拍車
特集 容器包装リサイクル/PETボトル独自処理ルート調査

 PETボトルの市町村分別収集量のうち、3分の1が自治体・組合単位で独自入札を行う「独自処理ルート」に回っている。指定法人ルートと独自処理ルートのどちらを選ぶかは地域の事情によって判断が分かれるところだが、国内外での資源需要が拡大する中で、市況の変動による影響も大きくなり、いよいよ舵取りの難しい問題となってきた。ここでは本紙が毎年実施している独自処理ルート調査をもとに状況をまとめるとともに、結果の一部を抜粋して紹介する。

◇大規模災害に備え
処理体制整備204億円/循環型社会形成推進交付金285億円
2014年度環境省補正予算

 1月9日に成立した2014年度環境省補正予算(2179億円)の中身は、中間貯蔵施設整備等に係る影響を緩和するための交付金1500億円をはじめ大規模災害に備えた廃棄物処理体制検討・拠点整備事業204億円、ダイオキシン対策で整備した施設の老朽化に対応するための循環型社会形成推進交付金(国土交通省計上分含む)285億円、産業廃棄物不法投等原状回復措置推進費補助金23億円など廃棄物処理関連が目立っている。

◇リサイクル産業の活性化を重視
法制度の社会コスト削減/アジアでの資源循環システム構築へ
資源リサイクル政策インタビュー

- 経済産業省 リサイクル推進課長 深瀬 聡之氏 -
 日本のリサイクルビジネスは新たなステージに踏み出しつつある。リサイクル産業の発展には、国際的な視点を含め、企業の競争力を強化すべきとの見方もある。資源有効利用促進法や個別リサイクル法といった法制度面の運用改善も産業育成のポイントになる。経済産業省産業技術環境局の深瀬聡之リサイクル推進課長に資源循環を観点とするリサイクル政策について聞いた。

◇3Rの推進・質の向上へ
制度の安定的・効率的な運用/自動車リサイクル政策インタビュー
- 経済産業省 自動車課 自動車リサイクル室長 金澤 信氏 -
 自動車リサイクル法が施行されて10年が過ぎた。経済産業省と環境省は、昨年8月から合同会議で法制度の見直しに向けた議論を開始した。経済産業省製造産業局自動車課の金澤信自動車リサイクル室長に議論の進捗状況や見直しのポイントについて聞いた。

◇回収量は1万3236tに
再資源化できる金属の含有率は56.8%/認定事業者の過密化も
小型家電R法の動向

 2013年4月1日に施行された「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」、いわゆる小型家電リサイクル法。デジタル機器等に含まれる有用金属資源の確保と有害物質管理、最終処分量削減等を目的に動き出し、間もなく2年が経過しようとしている。
 主管する環境省・経産省は昨年12月2日に合同審議会を開き、同法の取り組み状況を報告。有識者らとともに今後の論点整理を行った。ここでは、そのなかで見えてきた同法を巡る動向をまとめた。

◇自治体コンプライアンスを徹底
参考となる判例紹介で注意喚起/新春 インタビュー
- 弁護士 阿部 鋼氏 -
 環境省の「使用済製品等のリユース促進事業研究会」分科会の委員を務めるなど廃棄物処理法を幅広い分野で活躍する阿部鋼弁護士。これまで一貫して自治体における廃棄物処理法コンプライアンスの徹底を訴え、参考となる判例を紹介、注意喚起に努めている。最近では許可業者の不許可処分の取り消しや産廃処理施設の設置許可の取り消しなどの行政訴訟に注目している。(聞き手=本紙・加藤)

◇適正処理のニーズ高まるアジア
海外進出で収益拡大を/新春 インタビュー
- ジームス・アソシエイツ 代表取締役社長 有岡 義洋氏 -
 近年、東南アジアをはじめ海外での環境ビジネスに、日本企業が進出する例が増えた。東南アジア、東アジア等地域では、大気汚染等の環境対策に加え、周辺環境の保全につながる廃棄物の適正な処理・リサイクルのニーズが高まっている。他国の環境技術に対する関心も高く、日本企業も視察等さまざまな形で情報交流、提携等を行っている。ただ、現地で処理・リサイクル事業を行うにあたっては、社会事情の異なる地域ということもあり、参入にはリスクも想定しておく必要がある。日本企業による、欧米他、東南アジア、インド等での廃棄物処理・リサイクル事業の支援等を手掛けるジームス・アソシエイツ代表の有岡義洋氏に話を聞いた。

◇アジア新興国に進出加速
廃棄物処理・リサイクル技術を活用/循環型社会システム整備へ
日本企業の海外展開

 人口減少や製造業の拠点再編などの影響により、長期的に見ると日本国内の廃棄物市場は縮小していくと言われている。対照的に中国や東南アジアをはじめとした新興国では、経済発展や人口増加に伴い、廃棄物処理やリサイクルシステムの整備が課題となりつつある。新興国の廃棄物問題に対し、社会システムや技術面など日本が果たせる役割は大きい。今回は日本の廃棄物処理・リサイクル企業によるアジア進出の動向を追った。

◇シンガポール廃棄物処理事情
リサイクル対策が急務/急激な経済発展の影
 著しい経済成長を遂げてきたシンガポール。外国人受入政策の推進などで人口が急増した結果、廃棄物の排出量も大きく伸びている。1970年から2012年までに人口は2.6倍、廃棄物の排出量は6.4倍に増加し、リサイクル推進が課題となっている。
 日報ビジネスとティ・シィ・アイ・ジャパンは、佐藤泉弁護士を団長に迎え、昨年10月28日から30日までシンガポール廃棄物処理事情調査を実施した。

◇台湾の廃棄物処理事情
ごみ排出量を大幅減/段階的に環境改善政策を実施
先進的技術の実証実験

 かつての台湾では、経済成長に伴い、環境汚染が深刻化していた。台北市政府は環境政策を段階的に実施し、ごみ排出量の大幅な減少に成功した。日報ビジネスとティ・シィ・アイ・ジャパンはシンガポール視察に続いて、佐藤泉弁護士を団長とし、昨年10月31日から11月2日まで台湾の廃棄物処理事情調査を行った。台北市政府環境保護局、電子機器リサイクルや貴金属精製などを手掛ける「佳龍科技工程股份有限公司」、慈善団体「(財)台湾仏教慈済(Tzu Chi)慈善事業基金会」を視察した。

◇持続可能な緑の生産性について議論
廃棄物削減や再エネを活用/台湾国内のリサイクル事例も紹介
APO国際会議リポート

 アジア生産性機構(APO)は昨年11月4日から6日にかけて台湾・台北市内で「第3回緑の生産性国際会議」を行った。加盟20カ国のうち17カ国が参加し、学識者による再生可能エネルギーの活用や、スマートシティーの実現、廃棄物の抑制、資源使用量の削減など持続可能な社会・生産についての講演が行われた他、台湾国内で事業活動を行っている排出事業者の廃棄物抑制・リサイクル事例も紹介された。

◇第3国の躍進も終盤に失速
年間800億円市場の行方/原油下落が荷動きを止める
日本からアジア‐廃プラ輸出動向

 日本の廃プラ輸出先のほとんどがアジアに向いている。昨年は、中国の乱調、香港の伸び、ベトナム等の第3国の躍進といった特徴があった。品目では、PETくず減少、PE・PS系の高値買いも目に付いた。年間160万トン以上、800億円の市場は、原油暴落の中、どうなるのか。アジアの廃プラ市場を昨年の動きの中から探ってみた。

◇2015年に海外で開催される主な環境展示会

◇環境と福祉のマッチング
戦略的な活用事例が次々と/貢献性と実利を両立
就労環境づくりがカギ/廃棄物分野での障がい者就労支援

 近年、廃棄物業界でにわかに関心を高めているのが社会貢献活動――なかでも、障がい者の就労支援だ。すでに多くの処理事業者が障がい者就労に取り組んでおり、なかには経営戦略の一環として取り入れている事例もある。一方で、障がい者の受け入れ態勢を整えることができず、有名無実となってしまった例も少なくない。ここでは、マッチングが進む廃棄物処理・リサイクルと障がい者福祉を取り巻く状況や動向、すでに就労支援に取り組む企業の事例を紹介する。

◇原単位は過去最高に
廃棄物・副産物使用量は3026万t/セメント業界の再資源化
 セメント業界における2013年度の廃棄物・副産物使用量は合計3026万トンに上る。セメント1トン当たりの廃棄物・副産物使用量は486キログラムに達し、過去最高を更新している。原料代替となる廃棄物・副産物の使用量は上限に近いとされ、より工夫した使用が求められる。一方、燃料代替となる廃棄物・副産物は高品質のものの集荷が難しく、多様化が進められている。セメント工場での再資源化の取り組みをまとめた。

◇ピーク時から11%減少
地域で差、九州は微増/最終処分量は横ばい傾向
データでみる産廃排出動向

 環境省が昨年末に公表した産業廃棄物の排出および処理状況等の調査結果によると、2012年度の総排出量は約3億7914万トンで、ピーク時と考えられる1996年度の約4億2600万トンに比べて約11%減少していることがわかった。11年度の約3億8121万トンに比べても、約0.5%減少した。処理現場の「産廃が減った」という実感を裏付けるデータだ。

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